3人が揃った時のバランス感
─ 今回初上映となる『Shall We Love You?』と『甘露』は、1シーン長回しで撮影されていますが、どうしてこのスタイルを選んだのでしょうか?
この2本に関しては、名古屋のgallery Nさんが開催した「ギャラリーN映画展」という企画のテーマが「フィックス・ワンカット」だったんです。自分ではフィックス・ワンカットで撮ろうというのは思いつかなかったことで、そういう枠でやるのも面白そうと思って。ちょうど『幸福な装置』を編集していたタイミングで、何か『幸福な装置』とリンクするような作品を撮れないかなって思っていた部分もありました。
学生ものは、今まで自分から積極的に撮ろうと思っていた題材ではなかったのですが、中島さんからテーマをいただいて脚本を書きました。なので他の4作品とは毛色が違った作品になりましたね。
─ 『甘露』についてはいかがですか?
出演している岡さんと田中一平さんは長い付き合いがあって仲がいいので、兄弟役を見たいなという想いがありました。舞台になっている場所は私の実家なんです。取り壊すタイミングでもあったので、この機会にあの場所で撮りたいなと。
─ 『Shall We Love You?』の舞台になった高校も、監督の母校だそうですね?
そうですね、新作の3本に関しては栃木3部作みたいな感じになっていますが(笑)。『Shall We Love You?』『甘露』はわりと意図的に同時期に撮ったというのもありますし、『幸福な装置』も地元に立ち返りたいというところもあって栃木で撮ったので、3作品はそれぞれに関連性があるというか、リンクする部分があるんです。当初の想定として、連続して観ていただくことを意識して撮影したので、今回特集上映でまとめて観ていただけるのが嬉しいです。
─ 『Shall We Love You?』の3人の俳優さんはどのようにキャスティングされましたか?
もうすぐ潰れそうな3人しかいない演劇部、という設定だったので、「映像の撮影ですが舞台をメインでやっている方も応募して欲しいです」とネットで募集をかけました。コロナ禍だったのでリモートでのオーディションを初めてやってみたんですけど、今回の3人に関しては、非常にキャラクターが立っていて、脚本のイメージに合う役者さんにお願いすることができました。
森川錦さんについては、主人公感を強く感じました。演劇の部長の役で、のんびりしつつも人を無意識に巻き込んでいくようなイメージの役者さんが欲しいなと思っていて。オーディションのとき、大らかな感じもあり、かつ中心にいられる人という印象を受け、ぜひ森川さんにお願いしたいということになりました。
今城沙耶さんは、あの3人の中では1番しっかりしているタイプというか、抑えをやれる子という役柄でした。落ち着いた感じもありつつ、ズバッと言える感じのキャラクターを求めていたので、すごく今城さんのイメージと合っていたと思います。
西田奈未さんに関しては、ギャルっぽい役柄だったので、他の2人とは違うイメージの方を探していました。西田さんはとてもお声が素敵だなとオーディションの段階で感じていました。3人が揃った時の声のバランスは、キャスティングするにあたってかなり気にしていた部分なので、そこに3人がはまったのでお願いするに至りました。