TikTokの書籍系アカウントによる紹介動画が大反響を呼び、ティーンを中心に絶大な支持を得ている斜線堂有紀の小説『恋に至る病』が長尾謙杜×山田杏奈のW主演で実写映画化。10月24日(金)より全国公開される。原作の斜線堂有紀先生に今作についてお話をうかがった。
映画にできるんだろうか?
─ 重版回数が30回を超える『恋に至る病』ですが、多くの支持を集めた理由はどこにあると思いますか?
オープンエンドで結末を限定せず、景が一体どういう人物だったのかをあえて書き切らなかったことだと思います。それにより考察をネットに出してくださる方が多く、自然と他の読者へと広めてもらえた。そこが1番の決め手だったかなと振り返ると思います。
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─ 結末を限定しないということは最初から決めていたのでしょうか?
いえ、最初の頃は結末も人となりも明確に決めていて、描写自体もはっきりと書いていたんです。ただ校了の直前、この作品とは別の作品を担当してくださった編集さんとの打ち合わせで偶然この作品の話になり、その編集さんが「景の思惑を決めきらない方が反響を呼ぶんじゃないか」と言われたんです。最初はすっきりしないとか、モヤモヤすると思われるんじゃないかと思ったんですが、一旦自分でも検討してみると、確かにそうかもしれないと思ったんですね。それで、確定的な描写を全部伏線に留めて、結末をちょっとばらけさせることにしました。あのアドバイスがなかったら、全く違った印象の話になっていたんじゃないかなと思います。
─ 圧倒的な存在感を放つ寄河景というキャラクターはどのように生まれたのでしょうか?
ブルーモルフォ自体は、巻末参考文献の通り、一時期インターネットですごく流行っていた「青い鯨チャレンジ」というものから着想を得ています。人をインターネットで誘導して、自殺させるという極めて悪趣味なものですね。この犯行はインターネットで完結している──つまり、学生でも可能であるわけです。その「青い鯨チャレンジ」を作り出した人物が、もし身近にいながら身の内に負のカリスマ性を秘めた女子高生であったら、と想像して作り出したのが寄河景でした。
事件の資料などでは犯人の幼少期までは分からなかったので、今の現代日本で、どういう子だったらこのようなことが可能な子供に育つのか。あるいは、どんな子ならクラスメイトがついていきたいと思うのか、孤独な時や追い詰められた時に、どういう子に寄り添ってもらいたいと思うか、ということから生み出しました。小学生の頃にこんな子がいたら多分人気者になるだろう、こんな子が近くにいたら親友になりたいと思うだろう、というイメージの集合体が寄河景ですね。
─ 宮嶺望はどんなキャラクターとして書かれたのでしょうか?
一見してどこにでもいるような、強い意思もなく、一見流されやすい人物に見えるけれど、寄河景に対してだけ1本芯の通った意思を持っている、少し歪なキャラクターですね。ベースは本当にどこにでもいるような子なのですが、そこに寄河景への忠誠心、まっすぐで狂信的なところ、彼女のヒーローであろうとする様を際立たせて作ったキャラクターですね。
─ 流されやすい、というのは現代の学生のイメージもあるのでしょうか?
現代の学生さんというよりは、人間は往々にして流されやすいものなのではないかと思っています。だからこそ、世の中の色んな事例が起こっているのかもしれないと。
─ 初めて映画化されると聞いたときの率直な感想を教えてください
もちろんすごく嬉しかったですが、正直、この作品は本当に映画にできるんだろうか、と思いました。

─ どのあたりが映画化するには難しそうだと感じましたか?
ショッキングなことが起こる話ではあるのですが、あくまで主人公2人の周りは静かに進行するので、撮り方が難しいんじゃないかなと。だからこそ小説では成立するものの、映像化は難しいかなと思っていました。