原作の寄河景が降りてきている
─ 映画化にあたり、制作サイドに伝えた要望などは?
特に要望は出していません。映画と小説はかなり違うものですから、自由に改変して構わない、ある程度芯の部分を捉えていれば、もう好きなように作ってくださって構いませんというスタンスで、最初からお願いしました。
─ 映像化する際はあまり干渉しないというスタンスでいらっしゃるのですね
そうですね。この映画の前に『コールミー・バイ・ノーネーム』という作品がドラマ化されたのですが、その際も、ある程度ストーリーの核みたいなものを変えなければ、自由に作ってくださって構いません、と伝えていましたね。それで、実際にとても上手くいきました。様々な事情がありますから、ある程度は改変されるのは仕方ないと思っていますし、ドラマの成功によって改変されたことで魅力的になることもあるな、という体感を得たこともあって、そこは割り切って気にしないようにしました。
─ 完成した映画をご覧になってみて、いかがでしたか?
読解力を求める映画になっているなとは思いましたね。ある意味で観客への信頼があるというか。真剣に何度も見て頂くことを想定しているような映画だなと思いました。
─ 分かりやすく説明された映画になると予想していらっしゃいましたか?
映画というメディアにする以上、そうした方が多くの方に届くんじゃないかなと。なので、けっこう挑戦的な作品になっているなと思いました。これはこれで作品としては良かったのではないかと思っています。
─ 映画の中で特にお好きなシーンがあれば教えてください
根津原が死んだ後の、景のスピーチシーンですね。すごく印象的で、カリスマ性というものをしっかり実写で表すことができるんだなと思いました。あのシーンは特に原作の寄河景が降りてきている感覚があり、感動したのを覚えています。
─ 寄河景を演じた山田杏奈さんについて、他に印象に残っていることはありますか?
とにかく演技に対して真面目な方だな、と。全てのことに礼節を忘れない印象がありました。何に対しても真剣というか。初めてお会いしたときから、この方だったら任せられるなと感じました。

─ イメージしていたキャラクター像とも近かったのでしょうか?
そうですね。どちらかというと、後半の凛々しくて、人を引きつける妖しい魅力のある景を演じられる方だなと思いましたね。あとで映画で初めて前半の元気なシーンを見て、真反対の表現もしっかりこなす方だな、とそのギャップに驚いた感じです。

─ 宮嶺望を演じた長尾さんはいかがでしたか?
ストイックでひたむきな印象でしたね。内側から輝いているようなオーラがありました。ご挨拶させていただいたときも、全く疲れを見せずにはつらつとしていて、「これからツアーがあるんですけど、映画公開までに知名度を上げてきます」みたいな発言をしてくださっていて。お忙しいでしょうに公の場では大変そうな素振りを少しも見せない方だな、と、尊敬の念を抱いたのを覚えています。現場の雰囲気を良くすることに長けている方だと思い、この能力を含めてのプロなのだな、と。映画でいうと自転車で疾走していたシーンはとても印象的でした。
