静の映画 ※ここからネタバレあり

─ 原作では小学生時代から描かれていますが、映画では高校生からの話になっています。このあたりは原作者としてどうご覧になりましたか?

物語の圧縮という面では、腑に落ちました。ただ、いじめの件は高校生ともなると、暴力の意味するところや悪意の種類が大幅に変わってきて、原作とは別のものになったと思いました。根津原のやっていることの凄惨さも増していて。ただ、いじめというものはそもそも「暴力」であり、小学生の設定で行われたことであっても根底の非道さは通じていることから、総じて作品のテーマとして合っているかとも思いました。

(C) 2025『恋に至る病』製作委員会

─ 先生が「ここは映像で見てみたい」と考えていたシーンはありますか?

すごく地味なシーンではありますが、景の友人の麻那が、学校に行けなくなって部屋に引きこもってしまっている場面ですね。これから自分がどうなるか、今の自分がどうなのか、ではなく、ただただ景に嫌われることを心配しているシーン、あそこが一番見たかったところです。あのシーンの不気味なズレをどう表現するのか気になっていたのですが、実際にすごく薄気味悪いシーンに仕上がっていたので嬉しかったです。

─ カーテンに挟まっているシーンですね

そうです。向き合って話しているのに、全然話が伝わらない。対話ができない演技が、すごくゾクゾクしました。麻那役の小林桃子さんがとても良かったんですよね。

─ 映像全体はどんな印象でしたか?

動というより静の映画だなと。原作の不穏な場面を変に盛り立てたりせず、見る人が見れば分かる不穏さというものを表しており、全体的に雰囲気がある映画だなと思いました。

─ 余白があると言いますか、色々と考えさせられるものがありましたね

そうですね。先述した麻那の家に行くシーンや、根津原の殺害シーンもそうなのですが、撮り方が静かな分、かなりホラー寄りになっていて、そこがすごく良かったですね。前半のキラキラしてる頃からは想像ができないぐらいの、気味の悪さがあって良かったです。往年のジャパニーズホラーを思わせました。

─ 撮影場所はいかがでしたか?

けっこうイメージ通りではありましたね。ただ、撮影場所になった学校がものすごく綺麗で。現代の学校ってここまで綺麗なんだなって、そこが一番ギャップがあったかもしれない。

─ もっと古びたイメージでしたか?

そう。私が普通の公立高校出身なので、こんなにおしゃれで広い学校に通っていたんだな、二人は……って感想になりました。倉庫や体育館も広いですし。

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