折り合いはまだついていない

─ メジャーから離れて、音楽の続け方を選び直したのが、2011年の自主レーベル立ち上げの時期だったように感じました

五味 そうですね。それまでは、音楽作って売って届ける、みたいなことを、言ってみたら外注していたというか。自分は音楽を作るだけで、それを作品・商品としてまとめて、誰かのところに届けるとか、そういうことはレーベルやレコード会社の人に任せていた。けれど、そこまで自分で責任を持ってやるというかたちに切り替わったのが、あのタイミング。

音楽だけやっていた時代と、それをどうやって届けるかという、もっと手前とか向こう側にあるものに自分が関わるようになったのが、レーベルを立ち上げた2011年やったと思う。それ以前も何も考えてなかったわけじゃないけれど、強い意思があってやってたっていう感じでもなかったんで、大きな節目ではありますよね、やっぱり。

─ 映画の中で「自分を切り売りする」という言葉がありましたが、そのあたりはどう折り合いをつけてきたのでしょうか?

五味 折り合いはね、まだついてないと思う。でもどこかで線引かないとやっぱり売り物にはできないんで、その線を引く場所ってどこなんやろ、みたいなものは、未だに探りながらやってる。なので、何かを割り切れるようになったな、みたいな感覚っていうのはあんまりないですね。

─ 「まだ仕事として割り切れていない。音楽を楽しみたい」という話もありましたね

五味 そうですね、そういう気持ちももちろんある。だからって、俺さえ楽しけりゃいいんだってことでもない。例えば3,000円のチケット買って見に来た人が、気持ち的に元取れへんかったら仕事として成り立たないんで。それがCDでもレコードでも何でもそうですけど。お互いに気持ちいい取引ってなんやろって。誰かが我慢せなあかんみたいなこともあるので、それはその都度調整していくってことだとは思うんですけど。

「サブスクがないから不便です」っていう人もやっぱりいるし、そこに対して割り切れてない部分もある。手放しで今のやり方が絶対にいいんだ、とは思わない。届かないところとか、納得いってない人もどこかにいることは、忘れたら良くないと思う。そういう人もいるけど、俺はこんなやり方を選びました、っていう気持ちで、行ったり来たりしてますね、今も。

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