聴く人の温度がわかる距離で

─ 活動を振り返って、できたこと、できなかったことはありますか?

五味 今のやり方になって、お客さんというか聴く人と、僕ら作る側の距離や近さが、届ける作業を誰かに任せてたときに比べたら圧倒的に近づいた。顔が見えるし、温度が分かる。店頭で人に会うし、ライブでも人に会うし、そういうものが手に入ったっていうのは一番実感として大きいですね。

音楽ってコミュニケーションのツールやと思うんで、それを使って人とどうやって繋がるかって考えたときに、相手の顔が見えなかったらやっぱり気持ち悪いですけど、それが実感として手に入ったっていうのが一番大きいかな。でも、手に入らなかったものもありますよね。

……あるか?手に入らなかったもの(笑)。

MINORxU 逆にすごいね。それがスッと出てこないっていうのは(笑)。大体理想が叶ってるってことなんじゃない?

五味 手に入ってないから分からないですけど。例えば、会社に入って仕事するメリットってあるじゃないですか。チームでやって、すごく大きいプロジェクトを動かすとか、一人では作れないものを作るみたいな。例えばピラミッドを作るみたいなことって、一人ではできない。そういう、自分一人とか、メンバーと少数精鋭でやりますっていうやり方では作れないピラミッドみたいなのもたぶんあると思う。エンタメ産業って一日ですごい金が動くこともあるけど、ああいうものってやっぱ僕らは、景色として見られないんで。手に入らなかったものがあるとしたらそういうもんなんかな。

でも俺別に、自分の墓ピラミッドじゃなくていいしな、みたいな感じもある。だから、いつか作りたいって思ってるわけではないんですけど、僕らには手に入らない、見えない景色っていうのがそういうもんなんかなっていう気はしますね。

─ 映画の中で「夢を叶えてる」という言葉もありましたね

五味 そうですね。夢を叶えたっていう感覚はある。夢の規模って、別に人によってそれぞれなんで。僕らはやりたいことをやれたな、てかやれてるなっていうか。たぶんみんなまだ25年を振り返るっていう意識もそんなにない。途中経過の一応現状の報告みたいなことだと思うんで。叶えたとも言い切れないとは思うんですけど、なんとなくそういう気持ちではいますね。

(C)2026映画「LOSTAGE」製作委員会

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