特別ではなく、いつものライブ

─ 野音でのワンマン公演当日は、雨も降り真冬のような寒さでした。3月開催ということで、春の心地よいライブを想像していたのですが……

五味 俺もそう思った。たぶんみんなそう(笑)。

─ LOSTAGEにとって過去最大規模のライブとなりましたが、見えた景色はいつもと違っていましたか?

五味 シンプルに嬉しいですね。いっぱい人が来てくれて、大きいところでやれた。そこを目指してなかったとしても、結果そうなったっていうのはすごく嬉しいし。でもだからと言って、じゃあ次は武道館を目指すなんていうスイッチの切り替えはない。この感じで続けて、縁があって、じゃあ今度武道館やりましょうとか、国技館でやりましょうみたいな話が出てきてそこに辿り着けたらそれでいいし、そうじゃなくてもいい。また(奈良)ネバーランドでワンマンやるでもいいし。

景色としては良かったし嬉しかったけど、(下北沢)シェルターがいっぱいになってるのとか、ネバーランドがいっぱいになっているのと一緒ですね、結局は。そこで得る達成感と違っているとか、あの日だけが特別ってことでもないと思うんで。鳴っている音楽も一緒やし。周りにいる人たちの仕事の量は違うかもしれないですけど、「全然違うもんなんですよ」って言うのもなんだかなと。今週末のライブと一緒です、みたいな気持ちではいたいなって。

─ 屋外の会場とライブハウスでは、演奏の面では違いが大きそうですね

五味 そうですね、野音はね、もうめちゃやりにくかったです。けっこうみんなそう言ってる。やりやすい場所ではないけど、その場の持っているムードっていうか、歴史もあるし、それぞれの想いも高まってたりするわけじゃないですか。だからそういうのも相まって、特別なものに感じたりするとは思うんですけど。単純に音響とかだけで言ったらやりにくかったです、めちゃくちゃ。気持ち良かったですけどね。

─ ライブで初期の曲を聞けるのはファンとしては嬉しいですが、激しい曲調に身体的な面で苦戦することもあるのでしょうか?

五味 ああ、ありますよ。老いというか、自分のフィジカルっていうんですか、体の変化みたいなものは。特にドラムと歌かな。ギターやベースってそこまで物理的に動かす部分はないけど、歌やドラムで使ってる体って、どっちかっていうとスポーツに近いから。俺とドラムの岩城は、そういう昔の曲に対して、どうやろな、みたいなのはありますね。

でも、そうやってできないことが出てくるのも、人間やったら当たり前。20歳のときにやってたことを46歳で同じようにやるのは逆に無理やと思う。昔の曲をやるにしても、メンバーも変わってる。今のLOSTAGEでどういう風にやるのかとか、逆にやらないのかとか。じゃあそれができないから新しい曲で何やるのかとか、そういう試行錯誤があるわけじゃないですか。だからそれをやるべきで、昔のままやろうぜみたいなのって、あんまり意味ないなと思ってる。

聴いてる側も、昔の曲好きって言ってる人は、同じだけ年とってるわけじゃないですか。だから同じ耳じゃないから、そのときそれが好きだった今のその人に、いいと思ってもらえるようなことを新しく提案する方がいいと思う。そのときのその人に語りかけても、その人はもういないんで。今のその人に届ける音楽を、って考えた方がいい気はしますね。

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