人の想いみたいなものが残るように

─ 五味さんがLOSTAGEとして、今後やってみたい音楽はありますか?

五味 音楽の種類というか、こういうジャンルのこういう曲でっていうのはもうないかもしれないですね。たぶん僕ら3人とも、音楽的な向上心とか、探求心みたいなのってあまりない。地元の友達が、週末時間あるから集まって麻雀やろうぜ、みたいなノリでスタジオ入ってるんで。麻雀で新しい技とか考えないじゃないですか、役も決まってるから。その中でどんだけ面白くそこにいるやつと遊ぶか。そういうノリでやってるから、やりたい音楽は何ですかって聞かれても出てこないんですよ。だからといって、今やってることを続けたいだけでもないんですけど。音楽を作ってるっていう意識があんまりないっていうか。

(C)2026映画「LOSTAGE」製作委員会

─ どんなときに曲になる感覚がありますか?

五味 3人で音出してるときに出てくるんですよね。麻雀牌混ぜてるみたいな状態でやってたら、牌が揃ってきて、みたいな感じ。なんで麻雀に例えてんのか分かんないですけど(笑)。体で作ってるって感じなんで、頭はもうみんな使ってない。

─ 誰かの居場所としてのLOSTAGEという話もありましたが、これからLOSTAGEをどんな居場所にしていきたいですか?

五味 それもこの映画作ってもらってなかったら、自覚することなかったと思う。普段バンドをどうしていきたいかとか、真剣に音楽の話とかしないんで、メンバーそれぞれのインタビューを見て、改めてこの人たちこういう風に思ってたんやなと。それぞれにとっての、自分の居場所というか、拠り所みたいなものっていう意識は共有できていて、それは良かったなと思ったんですけど。

自分がやってるバンドとかライブとか、曲、なんでもいいですけど、自分たちの作ったものが、音楽を聴いてる人や、応援してくれてる周りの人、関わってるスタッフの人、普段ライブハウスの現場で会う人とか、そういう人たちにとっても、居場所や拠り所になっていって。

でも、やっぱり不定形のものなので、いつなくなってもおかしくない。僕らが辞めますって言ったらそれで終わりじゃないですか。だから、LOSTAGEの概念みたいなものに、必要なときにすぐアクセスできるように守っていきたいというか、どっかに置いておきたい。いつでも遊びに行ったり、寄り道したりできるようなものにしておきたいというのはありますね。続けるのが目的っていう感覚はないですけど、そういう場所が、どこかにずっとあったらいいなと思う。僕らじゃなくてもいい。他にあればそこにいけばいいから。

(C)2026映画「LOSTAGE」製作委員会

自分もいつか死ぬし、みんな死ぬじゃないですか。だからバンドもいつか終わる。そうなったときに居場所がなくなる人が出てきたら困るから、LOSTAGEみたいなもの、居場所みたいなものを、みんながどっかに持っておけるようにしたい。

それは例えば奈良の音楽シーンでもいいし、全国のライブハウスシーンでも何でもいいんですけど。そういう場所を作れるように、人の想いみたいなものが残るように活動する。もうそのときにはLOSTAGEじゃなくなってるけど、別にLOSTAGEじゃなくてもいいと思うから。話しながら、いま僕らがやってることが、そこに繋がったらいいなと思いましたね。LOSTAGEがどうとかっていう話じゃないかもしれないです、もはや。

─ バンドの活動を超えて、もっと大きなところに到達している感じがします

五味 バトンを渡すっていうか、どっかに何かを残したい。それってなんなんやろみたいなのは今も頭の中にあって。俺がこれ作ったとか、俺はこんだけCDを売ったとか、そういうものじゃなくて、それこそ「居場所ってなんなんやろ」みたいなもの。今の活動が、みんながずっとどっかに忘れず持っておけるようなもの、そこに繋がったらいいなと思う。

─ 最後に記事を読んでいる方に今作についてメッセージをお願いします

MINORxU こういうバンドがいる、こういう選択肢があるってことが、この映画を通して伝えたいことの一つ。何かに行き詰まったり、今までのやり方で人生がうまくいかなくなったとき、壁にぶち当たったときの考え方の一つの参考になったらいいかなって。割と使命感で撮ったところもあるんですよね。

五味 音楽とかバンドとかに全然興味ないような人でも、大事にしてるものとか、その人のいる場所があると思うんで。音楽じゃない別のやり方で、届いていったらいいなと思う。

1 2 3 4

5

6

RELATED

PAGE TOP