磯部ワールド

─ 磯部監督の作品に初めて参加していかがでしたか?

楽しかったです。磯部監督の『凪の憂鬱』がとても面白くて大好きなんです。磯部さんワールドみたいなものがあるなと思うし、磯部さんの組に入ったら、もうそのワールドの人になってしまうという感覚はあります。

─ 磯部さんワールドとは?

何ていうんですかね、自分のムード、空気に持っていくというか。私は磯部さんを面白い方だなと思っているんですが、いい意味でずるいというか、「てへへ」みたいなところが結構あるんですよ。磯部さん個人が持っているかわいらしく、面白いところ。多分愛される部分ですよね。それが現場にも流れているから、自分も気づいたらついていってしまっている感じはありましたね。

─ 監督から演じる上で伝えられたことはありましたか?

それが一つもないんですよ。もうちょっと間を開けてから、程度です。何回もテイクを重ねることもなかったです。

磯部さんの映画が好きな方はみんなご存知だと思いますが、磯部さんが普段生活をしている場所が出てくるんです。監督の生活をしている所に私たちが行くので、近所のお兄ちゃんみたいな感覚というか。磯部さんがそもそも持つ空気が現場に放たれているので、あとはそこに入るだけという感じですね。

それと、磯部さんは現場でモニターを見ているときは結構笑っていて、その笑っている姿を見て、演出は何もないけれどこれで大丈夫なんだと思えました。何も言わないけれど、遠くから神の視点で笑って見ているみたいな感じ。

たぶん人間のことを面白いと思っているんですよ。面白い人間が好きだと思うし、オーディションの時も「なんか面白いと思った」みたいなことを言われました。そういったものが磯部ワールドの空気だと私は思います。

磯部さんの周りでは、気張っている人は浮くと思うんですよね。演者のポジションじゃなくてもみんな。磯部さんが偉そうに気張っている人のことを面白いと思ってないというか。彼はそういうのを「なにやってるねん」と思う人だと感じます。

現場に行ったら、“磯部監督の世界”という名の大なわとびが回っているんですよ。だからそれに入るだけなんです。それを端から見ている人なんて、磯部さんの映画の中に存在してしまうともう面白くない。ちゃんと回っている輪の中に入ったら、勝手に飛ばされる、そんな感じです。別に指示はないけれど、その空気に乗ればちゃんとそこの住人になれるというか、そういう方だなと思いました。

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