何を投げてもちゃんと反応してくれる
─ 相手役の加部さんとの共演はいかがでしたか?
とても楽しかったし、心強い人という印象です。映画の中だと、加部さんが演じる新平のほうが翻弄される人ではあるけれど、カメラが回っていないときは、基本的に加部さんが全部してくれる感じ。私は加部さんの後ろをただ歩いているだけ。「次なんだっけ?」「次はこうだよ」みたいな。お茶をこぼしたら拭いてくれて、いつもいろいろと世話を焼いてくれる、そんな感じでした。
─ 一緒に演じてみていかがでしたか?
新平は翻弄されたり、惑わされたりして自分の答えを探していく立場。自分が与える方ではないから、私達から与えられたものをちゃんと素直に受け入れる方を重視したとおっしゃってました。
こちらが真っ直ぐな気持ちでバーンってぶつかっていっても、何を投げてもちゃんと受けて反応してくれる。その反応があるおかげで私もまた信頼して前にいけるので、カメラが回っていないときと同様に、回っている時もすごく頼りになりました。
─ 他の役者の方々との共演はいかがでしたか?
この映画は関西だからできている面白さがあると思っています。監督も他のスタッフの方々もみんな関西人なんですよ。役としても、私と亜門くんだけ関西弁なしで、周りはみんな関西にルーツがある役者さんが演じていて面白いんです。
『夜のまにまに』のいい輪郭を作っているのは、この関西の方たちの面白さだと私は思っています。お母さんやお姉ちゃん、警察官、カフェの店長、みんな本当に面白いし、愛される個性のある役者さんたちでした。
関西弁のパワーってすごく大きいと思うんですよ。関西弁で「何してんねん」と言うのと、「何してるんですか」とでは全く違うじゃないですか。そこが作品の世界を作っていると思います。その周りの遊びがあってこその私たちなんだな、と。映画の輪郭や触り心地を作っていて、味の一つだなと思います。
─ 最後に記事を読んでいる方にメッセージをお願いします
誰もがいろんな「夜」の時間を過ごしたことがあると思います。そういうものの青さや、危うさみたいなものは、恥ずかしい感じはするけれど、それは何かをしようと思っているから生まれるものだと思うんですよね。
自分の人生の歴史の中で、成功体験のほうがメインとして描かれがちですが、その手前にある、隠したい危うい青さみたいな時間、実はそれがあったからこそメインの道があると思います。そこにいるということ、そこで迷うことは別に悪いことでもない。そういう時の応援歌のような感じもするし、年配の方が観たらその時に戻れることもあると思う、そんな映画だと思います。ぜひ観てほしいです。
山本奈衣瑠 YAMAMOTO NAIRU
1993年生まれ、東京都出身。
モデルとしてキャリアをスタートし、雑誌やCM、ショーと活躍し、2019年より俳優活動を始める。その傍ら、自ら編集長を務めるフリーマガジン『EA magazine』を創刊するなどクリエイターとしても精力的に活動。2022年の映画『猫は逃げた』にオーディションを経て、主演に抜擢。近年の作品に『走れない人の走り方』、『SUPER HAPPY FOREVER』、『ココでのはなし』(24)などに出演。今後も多数の待機作がある。
『夜のまにまに』
11月22日(金)シネマカリテほか全国順次公開
出演:加部亜⾨、⼭本奈⾐瑠、⿊住尚⽣、永瀬未留、辻凪⼦、岬ミレホ、⽊原勝利、⽇永貴⼦、川本三吉、時光陸、⼤宅聖菜、⾠寿広美、緒⽅ちか
監督・脚本・編集:磯部鉄平
主題歌:奇妙礼太郎「朝までのブルース」作詞・作曲:早瀬直久
プロデューサー:和⽥裕之、渡辺晃司、砂川仁成、⾕⼝慈彦
配給協⼒・宣伝協⼒:SPOTTED PRODUCITONS
配給・宣伝:ABCリブラ
(C)belly roll film
スタイリスト:青木 穣
ヘアメイク: 夏海
タートルネックセーター ¥ 15,400(ブラームス/ワンダリズム 03-5797-9915) その他は私物
Photo Gallery