本木雅弘×吉高由里子、静寂を切り裂く緊迫のクランクイン
本木の初日となった10月1日。松竹京都撮影所では、村重と妻の千代保(吉高由里子)が、有岡城の一室で語らうシーンからスタート。穏やかな会話劇も束の間、信長へと寝返った父を持つ少年・自念(槙木悠人)の乱入により、静寂が破られる。台本にして4ページに及ぶこの重要シーンでは、黒沢監督が本木と吉高に立ち位置や動線を細やかに指示。数回のリハーサルの後、2台のカメラを用いて長回しで撮影されると、現場の空気は一変。物語の幕開けを象徴する、息詰まるような緊張感が一気に作り上げられた。
圧倒的な存在感で場の空気を支配する本木と、控えめながら芯の強さを滲ませる吉高。そんな二人の芝居を凝視し、自然な感情を引き出していく黒沢監督は、熟練味あふれる演出でテンポよく撮影を進めていく。原作のもつ普遍的なテーマや謎解きの面白さに惹かれ、「近年読んだ小説の中で最も面白く、自分の手で映画化したいと思いました」と、満を持して初の時代劇作品に挑んだ黒沢監督。一方で、撮影初日は内心に不安も抱えていたそうで、「どの現場でも初日はいつもそうです。事前に考えた演出プランが本当に成立しているのか、俳優が生身の人間として心身ともに演じることが可能なのか、それはできないと言われたりしないか、自分は俳優ではないのでいつも不安なのです」と、のちに意外な胸中を明かした。
“クセ者”揃いの家臣たちが集結。不可解な連続怪事件がついに開幕!

翌日以降、現場には村重を支える“クセ者”揃いの家臣たちが続々と集結。忠義を尽くす郡十右衛門役のオダギリジョー、乾助三郎役の宮舘涼太、荒木久左衛門役の青木崇高らが参加し、ついに幕を開けた【第一の事件:自念の密室殺人】の検証シーンでは、真剣な眼差しで入念な準備に臨む黒沢組スタッフと、時折笑顔で言葉を交わしつつも、役へと深く潜り込むキャスト陣の姿があり、現場全体に心地よい緊張感と充実感が終始漂っていた。
