併せて解禁となったメイキング写真では、様々な表情の鈴木唯の姿が収められている。

早川監督は「子供を主人公にした映画を作りたいという思いは以前からあり、父ががんを患っていた体験を元に、家族の物語を描きたいと考えていました。脚本は、断片的なイメージから出発しました。私が映画を作りたいと思い始めたのは、まさにフキの年齢の頃だったと思います。そこから数十年蓄積していた様々なイメージを吐き出す形で脚本を書き始めました」と制作のきっかけを述懐。1980年代を舞台にしたことについて、「あの時代に印象的だったものを色々込めました。超能力に興味を持つフキの背景には、当時のテレビ番組が大きく影響しています。子どもの頃に見たら信じてしまうような番組が多く、そういうものを信じることで夢を見たり、現実逃避したりすることができた子どもも多くいたでしょう。なぜ子どもの頃はおまじないや超能力にあれ程惹かれたのだろう?と考えたときに、ただ面白いからというだけではなく子どもが抱える何らかの欠落だったり、不安だったりというものが理由にあるのかもしれないと思いました」と分析し、「あの頃は、ああいう番組が普通にお茶の間で流れている無邪気な時代であり、日本という国が急激に経済発展し、足元を見失っているようなところもあった気がします。お金を消費することが良しとされ、欧米に追いつこうとする熱気がある一方で、西洋の文化をそのまま真似ることに注力し、本質的な価値を見誤り、家族との関係も変質していった時代でもあったと思います。この物語が80年代を舞台にしているのも、そういう意味で重要だと言えるかもしれません」と理由を述べる。

また、「自分が子どもだった頃の気持ちを思い出して、世界がどう見えていたか、どう感じていたかを表現したいと思いました。子どもの頃は言語化できないことが多く、起こっていることを頭では理解できずとも心は感じている、ということがままあります。そういう感覚をリアルに掬い取るような映画にしたいと思っていました」と語り、「子ども視点を表現するために、すべてを説明してしまわないバランスに気をつけました。また、子どもの複雑でアンバランスな心情を描くことも重要でした。フキと友人との関係も、子どもの純粋さと残酷さが両方描かれています」と工夫した点について明かした。
