満島が「演出の仕方がとっても好きでした」と振り返る、中島監督ならではの演出。「心ばかりになって体が置いていかれることもないし、体ばかりになって心が生まれないこともない」と満島が語るその演出方法は、感情を表現するために必要以上に泣いたり、役の心情へ自分自身を追い込んだりすることではない。中島監督は満島に、「あなたが泣いていると、“自分のことをかわいそうに思っている人”に見えるから泣かないでね」と、直接的な感情表現を極力抑え、客観的な視点から、満島を聡子という役へと導いていった。
撮影が始まってからの満島は、頭で芝居を組み立てるよりも、体と心で役を受け止める状態になっていったという。「クランクインしてから頭が働かないというか…。体と気持ちがメインになっていて、もちろん自分でもそれを望んでいたのですが、監督自身が役柄やお芝居の“脳みそ”になってくれるので、私は自分の体と心を、話すセリフの内容とか、演出に近づけるような状態に持っていきました」。
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撮影に入る前、監督から「情に傾かないでほしい」という注文を受けていたという満島。監督は満島に対し、「溢れ出る思いを涙ではなく怒りや焦りや苛立ちが湧き上がってくる方に振ってほしい」と伝えていた。それでも、あるシーンの撮影で涙が止まらなくなった満島は、中島監督から「まだ泣いちゃうね、ちょっと涙を止めよう」と言われたという。それでも涙がこぼれてしまう様子に、監督は再び、「また泣いちゃったね。(涙を)止めよう、頑張れ!」と声をかけた。満島は、このやり取りについて、「すごく難しかったけれど、その演出が面白かったです。自分の人生とも照らし合わせて、泣いてばかりいちゃいけないなって思いました」と笑いながら振り返る。「監督はすべての俳優さんに対して、それぞれの性質を十分に分析した上で、求めるものをはっきりと伝えるんです。本番でちょっとでも気になることがあったらOKは出さないので、その判断を信じて自分も力強くいようとしていました」。
時には感情を爆発させる聡子の芝居に苦戦し、監督との対話を密に重ねながら聡子を演じきった満島。撮影を終えた時の心境を「満身創痍」という言葉で表現し、「聡子という役への演出を通して、たくさんの景色を見せてもらえたと思っています。現実と地続きの世界にまっさらに向かい合った、そんな撮影だったと感じます」と振り返った。
撮影の13年前に交わされた「今度一緒に仕事しようね」という言葉から始まり、中島監督との初タッグが実現した『時には懺悔を』。監督に芝居の“脳みそ”を預け、体と心を使って聡子を生きた満島。満島が全身全霊で挑んだ演技が、傷ついた人々の心へ真っすぐ飛び込んでいく聡子という人物に、鮮烈な生命力を与えている。