対談の終盤、互いに「これはマネできない」と思う部分に話が及ぶと、日本を代表する両監督から深いリスペクトの言葉がこぼれた。濱口監督は、恩師でもある黒沢監督の作品が持つ圧倒的な力について、「得も言われぬ『これが映画なのだ』という感覚。問答無用の説得力みたいなものは、やはり真似できるものではない」と熱弁。「どれだけ届こうと思っても届かない」と、その到達点への尊敬の念を口にした。
対する黒沢監督も、濱口監督の演出の「質と量」について、冒頭から主人公の置かれた複雑な状況を持続させて見せつける手腕に対し、「あれ、僕にはできないんですよ。僕にはできない資質ですね」と称賛。さらには、濱口監督の現在地について、「僕は普通に普通の映画で頑張るけれど、(濱口監督は)映画とも言えぬ、別な何かに向かっているんだろうなと思う。ものすごいところに行ってるんだなということだけがわかる」(黒沢)と表現した。
最後に、両監督からそれぞれの作品における魅力について、「主役の本木雅弘さんから脇役まで、本当にいい味を出している。あの時代に生きた人々がどんな風であったかを、隅々までいろいろな俳優たちが表現しています」と、スクリーンに映る人間の魅力を語る黒沢監督。その言葉に、濱口監督も「黒沢さんの映画に出てくる俳優は、なぜこんなにいいんだろうと今回もあらゆる人に対して思いました」と返答。そして濱口監督は、カンヌ映画祭にて、主演のヴィルジニー・エフィラと岡本多緒が最優秀女優賞に輝いた自身の作品について、「どのキャラクターも、それぞれの人生を背負ってそこにいるように見えてほしいと思って演出しました。3時間16分という上映時間は、意外と人生そのものに比べたらずいぶん短い時間であると思っていただけるのではないかと思っています」と語った。