緩やかに築いていく人間関係

─ ロードムービーとしての側面もある作品で、3人が色々な場所を歩いて、感じて、少しザワザワした心をゆるやかに癒していきますが、演じる皆さんは大変だったのではないかと。大きな事件があった方が芝居にも抑揚がつけられていいのでは?と思ったのですが

山下 脚本は、心理描写の少ないシンプルなものだったからこそ、不安は大きかったです。でも、この映画は脚本よりも現場で生まれるものが絶対に大きいというのはクランクイン前から思っていました。役作りも色々してはみましたが、現場では全て忘れて、意図的な思考がゼロの状態で撮影に挑んでいました。

ロケ地・宇陀の景色、風や匂い、全ての登場人物がお互いのやり取りの中で、純粋に受け取っていった結果が映画に映し出されているというか。サエは受けの芝居が多かったので、気負わずに身を委ねていましたね。

自分で動かそうとせず、どんどん心が動いていくのを客観的な山下リオがサエを観察できたのが面白かったです。台本にはない「なんで笑っているんだろう」みたいな瞬間もあって、そういうことに自分が驚いた部分も多かったですね。

─ この映画のような現場は初めてでしたか?

山下 本作のエグゼクティブプロデューサーの河瀬直美さんの現場に近いものを感じました。『朝が来る』という作品に出演したとき、妊婦の役だったので、ずっとお腹につめものをしたまま、現場で生活をしていました。ご飯を作って、食べて、寝て。自分と役の境界線を無くしていく。今回はそこまでではないのですが、その感覚に近いというか。

堀内監督もお芝居について細かく指示を出すタイプではなくて。長回しでいつのまにか撮られていたので、緊張したことは1度もなかったくらいです。セリフが終わってもカットがかからないので、アドリブでやっていた部分も多かったし、実際の本編にも使われていました(笑)。撮影チームとして、信頼関係で結ばれていたからこそ成立していったような、奇跡的な瞬間をたくさん体験させていただきました。

─ サエとアカリとリュウタロウが自然と仲良くなっていく感じが良かったのですね。現場でもあの3人のような感じだったんですか?

山下 この現場以外の二人は知らないですが、少なくともこの現場では、リュウタロウもアカリも、役との境界線はなかったです。ずっとあのまま、みんな関西弁でしたし(笑)。そのまま一緒にご飯を食べにいって、一緒の宿泊先に帰るという…大人になって友達ができることってなかなか難しかったりもしますが、二人とはそんな関係になれた気がします。

それぞれ、全然違うタイプの人間で、たまにわ〜っとしゃべって爆笑したかと思ったら、3人とも急に静かになったりして、その空気自体がなんだか絶妙に楽しくて面白い。「なんで仲がええんやろ」と思いながら(笑)。

 けっこうバラバラな感じですよね(笑)

山下 そうそう。でもそれが別に気まずくないのも、映画と共通していて。だから本当に嘘がないと思える映画になっていると思います。

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