続いて授業の中盤では、最新作『箱の中の羊』について深掘りするトークセッションに。是枝作品でしばしば舞台となる「鎌倉」について質問を受けると、「鎌倉になったのはたまたまですよ」と笑う是枝監督。「最初は街を限定せずに制作部に探してもらって。建築家が設計していた自分の家を探してくださいとお願いしたんです。そういうのはけっこう建築雑誌に載っているので。埼玉とか吉祥寺とかいろいろ(ロケハンに)行きましたが、鎌倉はどうですか……となり。最初は、鎌倉で綾瀬さんとなると、どうしても『海街Diary』になってしまうので、どうしようかなと思ったんですけど、行ってみたらもうここしかないかという感じになりました。であるならば、この家を撮りつくそうと。鎌倉という土地もうまく活かせるといいなと思いながら脚本を書きました」と明かした。

また、劇中でヒューマノイドの翔がかぶっていた帽子について「あれはドクターイエローですか? 作品では江ノ電への言及はありましたが、JRへの言及は少なかったように思います。そんな中でイエローの帽子をかぶるというのは何かの意味があるように感じました。そもそもドクターイエローは幸運を運ぶ電車だと言われていますし、何か意図があったのでは?」という指摘も。そのユニークな視点からの質問には是枝監督も思わず笑ってしまいながらも、「あれは単純に翔が黄色が好きというところから選びました。ドクターイエローが幸運を運ぶ色ということですが、そう考えると残酷な話ですね……」と少し考え込むような表情で応じた。
また、大悟の歩く後ろ姿がまるで北野武のようだ、という指摘があった、ということに、「大悟さんはもちろんお芝居も良かったんですけど、ただしゃがんだり、歩いたり、走ったりするところがすごく良くて。踏切のシーンでも、翔を先に歩かせて、後ろからついていくというところがあったんですけど、ちょっと足を引きずりながら歩いていく、その背中が本当に良くて。これはずっと見てられるなと思って。どうやら大悟さんは、武さんにも褒められたことがあるそうで。大悟が歩いているのをずっと撮っていたいと言われたそうです」と振り返った。