授業後半には学生との質疑応答が行われ、作品のテーマや創作の背景に迫る質問が相次いだ。
まず、「複雑なテーマを作品として描く際に心掛けていることは何か」という質問に、是枝監督は「答えを出すことよりも、問い続けることが大事」と回答。自身の中に生まれた“もやもや”と向き合いながら考え続けること、そして登場人物の気持ちに寄り添いながら問いを重ねていく姿勢を大切にしていると語った。

また、人間の姿をしたヒューマノイドを登場させた意図についての質問も寄せられた。これに対し是枝監督は、「ヒューマノイドそのものではなく、ヒューマノイドを求めてしまう人間を描いている」と説明。「人間らしさとは何か」という問いについては、「曖昧さをどれだけ愛せるか」と言及し、人間ではない存在が現れたときにこそ、人間らしさについて観客とともに考えたいという思いを明かした。

さらに、「この作品を通して観客にどのような問いを投げかけたいと思ったか」という質問が寄せられると、是枝監督は「撮影している段階では、大きな問いが明確にあったわけではない」と回答。しかし、作品を完成へと導く過程で、「死者は誰のものなのか」という問いが自身の中で次第に浮かび上がってきたことを明かした。その思いはアフレコ段階でのセリフの変更にも反映されたという。さらに、夫婦が葛藤の末に子どもたちを森へ帰し、自分たちは再び家へ戻ることを選択するラストシーンについて触れ、「それが彼らの選んだ生き方。問いでもあり、ある意味では答えでもある」とコメント。作品を通じて、観客一人ひとりにそれぞれの問いや答えを見つけてほしいという思いを語った。

学生たちは、監督の言葉に熱心に耳を傾けていた。創作の裏側にある思考のプロセスから作品に込めた問いまで、率直な言葉で語られた今回の特別講義。答えを提示するのではなく、観客それぞれに問いを託す――そんな是枝監督の創作哲学に触れた時間は、『箱の中の羊』が投げかけるテーマについて改めて考える貴重な機会となった。

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