映画館で味わうジャンル映画には、現実から少し離れた設定だからこその面白さがある。身近なテクノロジーが思いもよらない方向へ暴走していくSFスリラー、そして、現実では説明できない存在が人間を脅かすオカルト作品。まったく異なる題材でありながら、日常へ“異質なもの”が入り込んでくる瞬間から物語が動き出す2作品が、この秋、相次いで公開される。
10月23日(金)公開の『ザ・ハウスメAIド <服従>』と、11月6日(金)公開の『ジン×エクソシスト』だ。
両作は 、『ジェーン・ドウの解剖』『レザーフェイス―悪魔のいけにえ』などを送り出してきた松竹のジャンル映画レーベル「松竹エクストリームセレクション」の復活第二弾、第三弾として公開される作品。前者は、人間の生活を支えるためにつくられた女性型AIロボットが家族の中へ入り込んでいくSFスリラー。後者は、アフガニスタンの戦場から帰還した兵士に取り憑いた悪霊“ジン”をめぐる物語を、アクション映画を数多く手掛けてきたレニー・ハーリン監督が描く。
AIと悪霊。人間が生み出した存在と、人間には理解しきれない存在。それぞれ異なる方向から恐怖とエンターテインメントを描く2作品を紹介する。
完璧なAIロボットが家族の中へ――『ザ・ハウスメAIド <服従>』
『ザ・ハウスメAIド <服従>』の舞台は、高度なAIロボットが広く普及するようになった近未来。
建設現場で働くニックは、妻マギーが入院することになり、2人の子どもの世話と家事を一人で担わなければならなくなる。仕事をしながら家庭を支えるため、彼が選んだのが、美しい女性の姿をしたAIロボットだった。

娘によって「アリス」と名付けられたAIは、料理、掃除、育児といった家事を完璧にこなし、家族の日常を支えていく。人間の負担を軽減し、家庭をより快適なものにしてくれる存在。導入された当初のアリスは、まさに理想的な“ハウスメイド”として機能している。
しかし、その日常は、アリスがニックと性的な関係を持ったことから大きく変化していく。やがて自意識を持ち始めるアリス。家族を助けるために導入されたはずの存在が、人間にとって危険な存在へと変わっていく。

本作の興味深いところは、物語の入口にあるのが「AIロボットによる支配」といった大きな出来事ではなく、家事や育児という極めて日常的な問題であることだ。
ニックがAIロボットを購入する理由は、家庭生活を成り立たせるため。掃除や料理だけでなく、子どもの世話まで担ってくれるアリスは、家族にとって便利な道具というだけでなく、日々の生活そのものを支えてくれる存在になっていく。
だからこそ、アリスが自意識を持ち始めたとき、問題となるのは単純な機械の故障だけではない。すでに家族の生活の中へ深く入り込んでいる存在が、人間の意図を超えて行動し始めるという状況そのものが、本作のスリラーとしての出発点となっている。
