リアルと幻想を行ったり来たりする撮影
─ この映画の構成についてもお聞きしたいのですが、とても複雑な構成の映画ですよね。映子と対峙する部長や先輩などとの会話は、会社の近所や相手の部屋で行っていると思ったら、突然、背景が草原に変わり、幻想的になるので驚きました。脚本を読んだときにどう感じましたか?
正直、脚本を読んだだけでは想像がつかなかったです。脚本の文字が太文字になっている箇所があり「これはどういうことですか?」と聞いたら、太字は草原のシーンでした。二人での会話を2回、違う場所で撮影をすると知り、これは出来上がるまでどんな映画になるのかわからないと思いましたが、逆に楽しみでもありました。

─ 全く同じセリフのシーンを別の場所で撮影したのですね
はい。舞台のように最初から最後まで一連でお芝居をしていくことが多かったですね。撮影初日が部長を演じる前原くんとのシーンで、一連の流れを一気に撮影するのでお願いします、と言われ、緊張感がありました。当初は、草原と現実とで同じテンションで演じようと思っていたのですが、実際には風が強く吹いていたり、霧がかかっていたりして、人間が関与できない力が働くので、予想がつかない、ということが現場に行ってみてわかったんです。
そこからは、無理に現実のシーンと近づけるのではなく、概念としてつながっている部分をより自由に撮影していきました。
最初は家具などの位置もスタッフの方が測って置いていたんです。でもせっかく広い草原で撮るのだから、実際の配置にぴったり合わせるのではなく、動かしてもいいんじゃないかということになり、当初思っていたよりも自由に演じることができました。
─ 映子の会話の相手は次々変わっていきますが、相手によって気持ちに変化はありましたか?
1対1の撮影なので、撮影ごとに変化はありました。今日は誰と対決するのだろうという感じでした(笑)。

─ 撮影で印象に残ったことはありますか?
先輩を演じる髙橋ひかるさんとのシーンは、思いがけず映子が笑っていたことに自分でも驚きました。監督も「僕も笑顔が多いと思ったんだよね」とおっしゃっていて。高橋さんとのお芝居の中で自然に出たものでした。
おそらく映子は特に学生時代のヒエラルキーや、その残酷さを知っていたから、先輩の言動が映子の知っている記憶に触れたのではないかと思います。
─ なるほど。 “やっぱりそうきたか” と思ってつい頬が緩んだ感じだったんですね