『湯を沸かすほどの熱い愛』以来、10年ぶりに完全オリジナル脚本に挑んだ中野監督。本作で真正⾯から向き合ったのは、「⼈を殺める」という重い題材だ。
「(映画の題材として)⼈を殺めるっていうことを僕はずっと避けていて、それは難しかった。やるんであれば、その⼈の気持ちをとことん突き詰めたいタイプだから」と語る中野監督。主⼈公が⼈を殺めるとしたら「じゃあ、なぜ彼は」と考え続けたものの、なかなか答えを出せず、題材を⻑く抱えながらも⼿を付けられなかったという。しかし、これまで数々の作品で“家族”を描いてきた中野監督は、簡単に⼈の命が失われていく社会情勢を⽬にするなかで、「ひとりの命が殺められたことで、⼀体何が起きるかってことをとことん丁寧に描いてやろう」と、本作への挑戦を決意。「それが今の時代に対しての僕のメッセージになるかな、と思って」と、その思いを明かしている。
ひとりの命が失われた後に、残された⼈々はどう⽣きていくのか――。⼈を愛すること、家族を求めること、そしてその愛が時に⼈を追い詰めてしまうこと。中野監督が⻑年描き続けてきた“家族”というテーマを、サスペンスという新たなアプローチで描き出す。
完成した本作を観た坂⼝は、開⼝⼀番「超名作︕」とコメント。物語について「すごく狭い世界の話」だと表現しながらも、⼣平、紗⽉、朝⼦という限られた関係性のなかに「無限が広がっている」と語る。⼣平を演じるうえでは、「ある意味、⼣平のことを僕は100%理解しないようにしようみたいなところもあった」としながら、「ただ100%共感はしていたい」と考えていたことを振り返る。⼣平の選択そのものが肯定されるわけではない。それでも「彼がどう思って、⽣きて、決断したのかってところは本当に丁寧に出したい」と向き合った。
そして坂⼝が本作について強く感じたのが、「何度も観たい」という思いだった。「⾯⽩かったからもう⼀回観たいなっていうよりは、本当の彼の⼼の底にあるものというか、彼のことから読み取りたくなるものが映画の中にたくさんあった」と語る坂⼝。「なんで彼はああいう選択をとったんだろうっていうことが分からないというか、そこがぼやけている⽅が思い出すんですよ」。さらに、「僕が来年観ても全然気持ちが変わると思うし、10年後に観てもまだまだ⼣平のことを知りたくなる映画」と、本作が⼀度観て終わる作品ではなく、観るたびに新たな感情や問いを呼び起こす映画であることを明かしている。
この⾔葉を受け、中野監督も「正しい正しくないということではなくて……」と応じ、「共感はして演じるけど、でも本当に決して正しい⾏為かって⾔われたらそうじゃないかもしれない」とコメント。登場⼈物たちの選択を⼀⽅的に肯定するのではなく、それぞれの思いに寄り添いながら、その先にあるものを観客へ委ねる――。本作ならではの魅⼒を2⼈が語っている。