是枝監督と西川監督の演出と脚本からの学び
─ 孫監督は是枝裕和監督や西川美和監督の監督助手として演出を見てきたと思うのですが、影響を受けたことはどのようなところでしょうか?
孫 私は是枝監督作品の、お芝居をしているように見えない、日常を見ているような雰囲気がとても好きなんです。どうやっているのだろうと現場で勉強させていただいたのですが、是枝監督は、面と向かって対峙してセリフを言うのではなく、なにかの作業をしながら俳優にセリフを言ってもらうことが多かったです。そこを私も取り入れました。
本作のオーディションでは、何か作業をしながらセリフを言うということをやってもらったのですが、これが得意な方と苦手な方がいると思うんです。
─ 西川監督とのお仕事はいかがでしたか?
孫 西川監督は脚本がいつも素晴らしいのですが、その脚本作りのためにすごく取材をされる方なんです。私は取材の現場に同行させていただいたのですが、その時に取材をした内容が、次の脚本に入ってくるんです。取材で得た知識や情報の使えるところはどこか、どうやって脚本に活かしていくのかを知ることができてすごく勉強になりました。
─ 今回は朝鮮学校を取材されたとおっしゃっていましたが、西川監督の取材に同行したことが活かされたんですね
孫 取材して脚本が180度変化したとお話ししたように、最初は全体的に朝鮮学校に対して批判的な内容だったんです。でも実際に学校で先生方に話を聞いて考えが変わりました。私はこれまで「民族差別があり、そこに居るしかなかったから、母親は朝鮮学校で仕事をしていた」と解釈して、母を許そうとしていたのですが、実はそうではなく、先生方はとてもポジティブな意思のもと教師をしていることを知りました。ソヒの父がなぜ教師にこだわるのかというのも、取材をしたことを盛り込んでいきました。

─ 撮影担当の山崎裕カメラマンは、是枝監督の作品でもお仕事をされている方ですが、今回、撮影を山崎さんにお願いしたのは?
孫 「潤一」という志尊淳さんが主演のドラマで、監督助手をしたときにご一緒したのですが、とても話しやすく人柄も素晴らしい方なんです。当時の私は素人同然で「なぜこの向きで撮影するんですか?」など初歩的なことを聞いたりしても、とても丁寧に説明してくださって。とても気があったし、山崎さんが撮影現場にいると楽しいし、安心できるのでお願いしました。
─ 恒那さんはベテランの山崎カメラマンとの仕事はいかがでしたか?
恒那 おじいちゃんだけど元気みたいな(笑)。
孫 本当に元気な方で。大御所なのに「こうしなくてはいけない」という厳しい決まりがなく、誰に対してもフラットに接するので、私はとても仕事しやすかったです。恒那さんのことも気に入っていましたね。
─ 監督がオーディションで出会ったときに「撮りたい」と思ったのと一緒で、恒那さんは誰もがつい目で追いたくなる存在なのですね
孫 恒那さんは「私って可愛い」みたいなものがないんです。芸能界にいても、本当に素の状態でいられる人なんですね。
